「イングロリアス・バスターズ」を見たのだった

11/23
悔しい思いをした後に見たこともあって、痛快な復讐劇。


 ずっと顔をしかめてるブラピがブロンソンみたいだった。
 男も女も思いっきり張り合う、知恵・度胸比べがカッコよかった。敵が徹底的にいやらしくて、張り合いがあるのも最高だった。
 若いイケメンの自意識過剰な愚かさを、これでもかと引っ張り出し、対しておっさんたちは徹底的に賢く渋く描いていた・笑
            ↑
   (あとでインタビュー読んだら、監督は「いい奴」として演出してたらしい…うそん。)


 英語・フランス語・ドイツ語入り乱れる脚本で、顔はみな西洋人で似たりよったりだが、言葉の壁で意思疎通できない恐怖/文化の違いを浮き立たせる効果としてしっかり使っていた。登場人物達があえてセリフで「フランス語は不得意なんでここからは英語でしゃべろう」と切り替えるシーンがあって、
 「役者に不得意な言葉を長々しゃべらせないように、気を使いながらギャグにしたのかな?」
と笑って見ていたら、それがそのシーンの重要なトリックだったりして驚いた。

 失敗が重なり、仲間を失いつつも追行される映画館大作戦〜エンディングまでの、偶然と執念の絡まった壮大な見事な取りまとめ方にゾクゾクした。
 残虐な事件が起こるたび「現実が映画をこえている」と悲観される昨今、
 「いーや、まだまだ映画は現実を『楽しく』超えられんぞ!」
というタランティーノの挑発のような感じもした。

   *   *

 過去・ことに戦争や大きな事件の話になると、たしかにどうしてもシリアスになってしまって、史実史実と神経質になりがちだけど、フィクションだと自覚してつくっているんだからそれはそれとして、作り物のダイナミズムとして、楽しむ余裕があってもいいじゃない。私も戦争はもちろん反対ですよ、ただ、また違う過去があれば、現在も変わっていたかもしれない、と考え直す機械にもなって面白いと思う。想像と現実の区別がはっきり付く健全な人なら、そう楽しめるのでは。

 全額バックキャンペーンやってたからなのか、途中で退席して帰ってこない人が4、5人いた(一番後ろの席にいたから動向がよく見えた)。
 前の席の年配の方は帰りはしなかったものの、しきりに首をかしげ、エンドロール流れると同時に跳ね起きて頭を横に振りながら出て行った…。
 人それぞれ色々見方はあるでしょうし、その方の心中はわかりようもないけれど…もし
 「戦争を茶化してる!こんな主題、認めない!」
と見えてしまったのか…もし、どうしてもそう思えてしまう方がいらっしゃるなら…
 「バスターズも執拗に残酷だし、どんなに被害被っても、復讐したら『おあいこ』。どちらを賛美しているわけでもなく、戦争に正義派ない。」
 という例として描いているものと受け取ればいいのでは。
 こんなエクスキューズをいちいち考えてしまう自分も規制慣れしてしまってる気がして、なんか悲しくなるけど、タランティーノもどのキャラも白黒つけない描き方にした、といってましたし。
 だって、これがもし戦争賞賛映画だったとしても、あの世界に生きたいと思わないでしょ?いつ殺されるとも知れない、あの緊迫した空気を耐え抜ける?生きながらバットで滅多うちにされて頭の皮はがれていいの?と。無理なら、スリルは映画に任せて、ほんとに戦争なんかやろうと思うんじゃねえぞ!---という、逆説的な平和のメッセージと考えればいいんじゃないでしょうか!!!