リザードVS スパイダー

 きょうは深作欣ニ監督/丸山明宏主演「黒蜥蜴」を、やっとみることができました。

 原作は江戸川乱歩のあれであります。美しい女盗賊「黒蜥蜴」は、低俗な欲望の渦巻く世間を嫌い、完璧な犯罪こそ芸術と信じている。宝石と若く美しい肉体の標本を愛し、それらを収集することを喜びとしている。これまで大胆で堅実な手管を用い、世間の目を欺いてきた黒蜥蜴であったが、天才探偵・明智小五郎との出会いによって計画は狂わされて行く。

 ミワさん賛歌の作品でした。ストーリーも単純な運びで、しかし、それでも、分かっていてもときめいてしまいました。大胆不敵な女盗賊にふさわしく、美和さんの自信に溢れた動き・台詞回し、豪華絢爛な衣装、視線のやりかた・いとしい人をなぞる指先の一つ一つまで、全てが徹底した美意識に統合されていて、ああ、ため息が出るばかり。
 しかし、やはり、首周り・二の腕のたくましさはきになってしまい…

そこがまた、完全には女性でない危うさで、「いけない!」と思わされる妖艶さにつながっていてよかったのかもしれません。明智の才覚を愛しながら、自分の生き様を貫くために忍ばせた思いにはきゅんとします。単純なんです。そういうのすきなんです。いいでしょ!!!


 はいはい。

 その後「蜘蛛女のキス」をみました。
 
 反体制運動に加わったことで投獄されたヴァレンティン。同じ監房に入れられているのは、本当の愛・自分の生きがいを求めるあまり失望し、少年に手を出して捕まったオカマのモリーナ。
 実はモリーナは、なかなか口を割らないヴァレンティンから革命運動についての情報を聞き出すよう、警察に仕向けられているのだ。はじめはモリーナを疎んじていたヴァレンティンだったが、互いの無償の優しさ、誇り高く生きる様に感化され、二人は信頼しあうようになっていく。過酷な拷問に掛けられ試されながら、己の意思を貫かんと頑なに耐えるなるヴァレンティンに、自分の思い出の映画の話をし和ませるモリーナ(タイトル「蜘蛛女のキス」は、そこで話された映画の内容にちなんでいます)。
 しかし、ヴァレンティンへの思いが愛に変わったことに気づいた矢先、モリーナは保釈されることになる。運動についての情報を掴んだかもしれないと読んだ警察が、おとりにつかわんと釈放したのだった。警察の思惑に勘付き恐れながら、ヴァレンティンから手伝いを依頼されてしまったモリーナは、保釈された後の自分の人生が見えてこず、悩む。
 その様子をみてモリーナの気持ちに気づいたのか、ヴァレンティンは運動家としての建前を取り下げ、ひとりの人間に立ち返り改めて言う。

「今度は踏みつけにされるな、自尊心を持て。
君を食い物にする権利なんて誰にもないんだから」

 いいこといいやがる。この映画を始めて見たとき、わたしはヤオイ好きな中学生。男と男が密接してるだけでギャーギャー言っていました。だからこの映画もはじめホモだホモだと半分冷やかしでみていたのです、それが。
 私がヤオイに走ったのは、もともとのエロ性分・禁じ手好きが起因しているのは勿論ですが、普通な女の子な話題についていけず、外れ気味な青春だったから、自分の居場所を求めた行き着いた結果でもありました。自分が浮かれられるのは限られた世界なんだと言い聞かせてたし、変人扱いされて嫌な思いして卑屈になってた。そんな調子だったから、勝手にゲイというマイノリティーカルチャーにも、この主人公のモリーナにも共感したりしていた、そんなところにこのセリフを聴いて、涙がどわーっと出てしまいました(ラウル・ジュリア演じるヴァレンティンに、自分の耳元で言ってもらえたような←それは萌えなんじゃねーの?)。同時にどういう生き方をしている人にも通じるセリフだと思いました。そして、その言葉を受けた後のモリーナの決意同様に、生きなければと思ったのでした。

 長々失礼。まだ見られてない方は機会がありましたらぜひご覧ください。
 
 ちなみにラウル・ジュリアは「アダムスファミリー」のお父さん役(情熱的愛妻家な怪人)で有名な人で、当時私が結婚したい人ベスト3に入っていました。なつかしい。亡くなってしまい、とても残念ですが。