「崖の上のポニョ」観たのでした。

 先にみた弟から

「かわいい絵なのかと思ったら実はおどろおどろしくて、なんかずっと、突き放されてるみたいな生々しい怖さがあった。さりげなくポニョのせいで地球滅亡しようとしてたし!ずっと不安なまま、いつのまにか終わってた」

などという感想をきいていたんで、どんな映画だよ!?と不安で悪いほうに予想していたけれど…実際自分で見ると、ドリーミーで楽しくて拍子抜けしてしまった。


あらすじ:
 海を治める妖精(?)の娘・ポニョは好奇心旺盛、父の目を盗んで人間の住む海上へ出向き、そこで人間の男の子・ソウスケと出会う。一目で互いを気に入った二人だったが、ポニョは人間を憎む父に連れ戻される。それでもソウスケと一緒にいたいポニョは人間になりたくて駄々をコネ一暴れ。そのとき、はからずも、父の仕事道具の「魔法の水(あらゆる生命の源で生命の進化を早める)をこぼしてしまう。自分もその魔法を借りて一時的に人間の姿を手に入れたポニョだったが、魔法の水は海全体に流れ込んでしまい、地球は生命力があふれかえって大変なことに(生物の進化がメチャクチャになるわ地球の引力が強まり水位上昇するわ)。ポニョはこの困難を乗り越え、ソウスケと一緒になれるのか…


 (以下感想)
 前作「ハウル―」とのお話の共通点を考えると、人魚のポニョに託したテーマ=本当の姿を知っても/知られても相手を愛し続けられるか、という点はかわらず。
 ポニョを守るソウスケくん=おとこのこらしい王子様キャラが宮崎アニメに帰ってきたけれど、その王子様もヒトの子だから母を思って泣くし、その母も女なのでダンナにかまってもらえないと泣くし−誰でも日常的に役柄・二面性を持っていることを、前作よりさりげなく描写してみせている。
 また魚族と人間の部族を越えた愛に、しばし、両世界間に混乱が起きるけれど、そこは「どちらにも根っから悪ものや敵はおらず、互いのちょっとの思い違いでカミアッていないだけ」という、戦争の起源を諭すような穏便な運びにして「傷付け合い」という描き方にはしていなかった。
 お話としては本当に
 「悪者のいない人魚姫」
なんだかんだ好きな気持ち1つ信じていればなんとかなるもんだよ、という楽観的で単純なストーリー。でもこの計算された簡潔さが、いくら子どもむけといえど、愛や冒険を語る上でそこまでややこしい設定やら善意・悪意のコントラストにばかり訴えなくても魅せられるもんなんだよ、という監督からの提示(挑発?)のよう。


・登場人物が少なく個々がクローズアップして描かれることが多かったからか、特に跳ねる、走る、触る、など、子供の細やかな動きの作画が、より丁寧に作られていてびっくり。力をこめた後はねかえってくる反動の描写などから、こどもたちの体重・肌のしなやかさが自然に伝わってくるようだった。

・風景:一見のどかできれいな、誰もが想像する田舎の海、しかし底や入江には漂流ゴミが堆積して汚い。ソウスケの家の中のゴチャツキなど、人間が積み重ねた「汚れ」を善かれ悪かれリアルに描いていた。

 海〜海の中の生物の描写が、また。微生物がクラゲが魚になったり波になったり、生命力の奔流を、色・形・大きさの定義を超えた伸びやかなメタモルフォーゼで表現していて面白かった。フライシャーのアニメみたい。


 脚本は…セリフ「大好き」の嵐。
 ポニョ←→ソウスケ←→母
 恋や愛を、互いの絆を試しカタルシスを導くためのギミックとして使うのではなく、自然発生的な日常的感情として描いているため、登場人物たちは気分が高まるとポンポン「大好き」言い合ってバグする。
 同じ回を見ていたのは小学校低学年くらいの子供たちが多かったんだけど、恥ずかしくていたたまれなくなったんだろうね、そういうシーンむかえるたび方々から、
 「…これいつ終わるの?」
 「…もう出ていい?」
そんな囁き声が…。たしかに、あたしも子どもだったらちょっと面喰らったかも…でもすきなものはすきで、大事にしちゃえ!と、そこはいやらしさなく受け取っていいんじゃないすか。
 (もうアニメファンのロリコンどうこうっていう批判も飽きたし。「そう見たい」人が多すぎるだけっていう部分もあるんじゃないの?w)