悪魔スヴェンガリ

 昨日は休みだったがすでにお金がないので…うちから一歩も出ずに手持ちのDVDを観ていた。中でも、買ったまま見そびれていた「悪魔スヴェンガリ」(1931・米)という映画にはまって3回見直した。
悪魔スヴェンガリ (トールケース) [DVD]

 監督はアーチー・メイヨという「化石の森」やマルクス兄弟の映画も監督している人だった。主演はドリュー・バリモアのおじいちゃんのジョン・バリモアジョン・バリモアは「狂える悪魔(ジキル&ハイド)」もかっこよかった。ジャケ買いしてそこらへんを調べずに買ったものだったので、おお、すきなものと繋がっているものだなあ、と関心しつつ。中身が、お話が。もうそれ以上に・・・。

 舞台は19世紀パリ。長身に長髪・長い髭、そこに埋もれる鋭い眼光。いかにも怪しい風貌の音楽家・スヴェンガリは、金持ちの夫人の声楽教師を勤め、暮らしをつないでいるらしい。しかし夫人がスヴェンガリを愛し金も持たずに家出してきたことを知るや、あっけなく彼女を自殺に追いやる。彼には、催眠術で相手を操る不思議な力があるのだ。カネヅルを失くしたスヴェンガリは、芸術家の集うアパートへ金の無心に向かい、そこで絵のモデルをしている少女・トリルビーに出会う。彼女の美しさと歌声にたちまち魅了されるスヴェンガリ
 だが彼女は若い絵描き・ビリーと恋仲になる。どうにか彼女を自分の物にしたいスヴェンガリは、ビリーとケンカをして落ち込む彼女に追い討ちをかける。

「ヌードモデルなど卑しい仕事をしているお前とあの若造ではつりあうはずもない。私が歌手として育てもっといい暮らしをさせてやる」

 それでもなかなか折れない彼女に、スヴェンガリは催眠術をかけ誘拐。ビリーは遺書めいたトリルビーの遺書めいた手紙を見つけ、自殺したと思い込む。

 それから5年後、トリロビーはスヴェンガリに育てられ、彼と共に「人気歌手マダム・スヴェンガリ」としてパリへ戻ってくる。ビリーを見て、一瞬催眠術が解けたトリロビーは彼の元に駆け寄るが、スヴェンガリの魔術に遮られ、連れ戻されてしまう。

 ライバル再出現に危機を感じたスヴェンガリは、その夜自分のすばらしさ、これからもますます高みを目指せるであろう夢を滔々と語るが、トリロビーには
「あなたには感謝しているけど、愛することはできない」
と面と向かって言われてしまう。金も名誉も手に入れたが一番近くにある愛しい女の心は永遠に手に入らないやるせなさ。また彼女に催眠術を掛け「あなただけを愛している」と言わせるものの、虚しくなり途中で術を解く。

 病魔に侵され、魔術が弱りいく中、ビリーは恋人を取りかえさんと行く先々追いかけてくる。また再会しようものなら、きっとトリロビーの催眠術は消えてしまう。ヨーロッパ中を逃げ回りながらやがて自分の死を予期したスヴェンガリは、願いにも似た、最期の催眠術をトリロビーにかける・・・

 スヴェンガリは平気で人を欺き殺し、飄々としていたくせに、トリロビーについてはたちまち骨抜きになってしまう。もっと残酷にトリロビーを我が物にするのかと思ったので物足りなさも感じつつ。心までは捉えられないという下りは魔法もののおきまりながら、いきいきしたトリロビーの姿を愛してしまったから、完全に束縛しきることもできない様子が哀れでした(ビリーも催眠術で殺せばよかったんじゃね?という疑問は「トリルビーが悲しむから気を使ったんだ!」と解釈することにしました)。悪魔は完全ではないから神ではなく悪魔なのでしたね。

 そういうわけで、エンディングではスヴェンガリの願いがかなったのか否か、ハッピーエンド/バッドエンド判断は人によりけりなのでしょう。

 またトリルビー(マリアン・マーシュ)が、憂いを帯びた顔立ちのくせに冗談が上手で、屈託無く表情を変えるその無邪気さが、おそろしくかわいすぎる(ほんっとにかわいい)。悪魔も惚れるわな。

 幼少の頃映画「帝都大戦」を見て、自分より強い女に惚れて、その女と戦った挙句殺される際、恍惚の表情を浮かべる魔人・加藤保憲に妙な色気を感じて以来、こういう適わぬ恋をする悪魔大王キャラに弱いので、ばかだなーと思いつつ涙涙でした。ってちゃんとした感想文に見せかけてただの「萌え話」ですみませんでした。