ナイロン100℃「犬は鎖に繋ぐべからず」

 岸田國士の戯曲「隣の花」「驟雨」「紙ふうせん」などを、同時間帯・同じ町内で起こった事件としてつなげ、オムニバスにして上演。
 ニューウェーブサウンドにのったコミカルな場面転換と振り付けで楽しませてくれながら、戯曲の作りとしては、各作妻と夫、旧友同士、隣に住まう者同士、姉妹など一対一で向かい合わせ何気ない会話で進行していく。その「気心の知」っている、と思い込んでいる者同士の遠慮ない気軽さの中に潜む認識・感情の起伏の小さなズレを暴いていくような仕組みで、それが大きなズレを生んで、沈黙の抑圧を強いている共同生活のおかしみ・哀しみを気づかせる。

 緒川たまき目当てで見に行ったけど、緒川さんは上手な芝居を期待して見に行ったわけではなくて、時代設定=昭和初期のつつましい女性像に良くあった、その独特の雰囲気を生で見られたのでよかった(アテフリだったのがよくわかる)、という観想にとどまった。よかったのはやはりレギュラーメンバーの息のあったはじけっぷりと、「犬は鎖に繋ぐべからず」で英語教師の父親を演じていた客演の大河内浩。一見堅物そうな外見、しかし発育の遅れた息子を見守る、やさしさと厳しさを併せ持った人徳者で、世の理不尽や道理とまっすぐ向かい合い、素直な言葉で言い表す・息子に教える。そんなキャラクターを堂々と演じていて、個性の強い各話・人物達が多い中、それらを取りまとめ観客への直接的なメッセージを岸田國士に代わって語りかけているような粋な役どころを見事に演じていた。ずうっとその話の中で生活している人間のように。

もうじきナイロンはオリジナルメンバー総動員の舞台があるそうなのでとても楽しみである。

(あと幕間にフランスギャルの「アイドルばかり聞かないで」をパンクっぽくアレンジしたカバー曲が流れていてそれが超かっこよかったんだけどあれは誰が演っているやつなんだろう・・・それに限らず使われていた曲全部よかったのでほんと、サントラ売ってほしい。)