松本隆VS平山夢明

 この前矢野顕子を聞きながら「新耳袋」を読んだら精神不安定になったと書きましたが。今日はラジオで「松本隆特集」を聞きながら平山夢明の「他人事」を読んでいたら、意外に合ったというか共通しててびっくりした。
         他人事

 義理の父親に家庭内暴力を振るわれ犯され身籠ってしまった少女が、父親に殺されても尚、ゾンビになって恋人と逃避する「おふくろと歯車」という話を読んでいたら、そこでラジオからYMO「君に胸、キュン」がかかったのだ。

♪僕といえば
 柄にもなくプラトニック

という部分が聞こえてきて、それはちょうど本の中の少年少女の関係と同じだったのだ。主人公たちはいかにも「今どきの10代」らしく描かれているけれど、都会っ子としてはめずらしく、彼らには肉体関係はないし、それに急ごうとする焦りもない。少年はセックスなしでも彼女が愛しいのでそれでいい、といい、健気にゾンビ少女を愛し守りきろうとしているのだが、さすがに、一旦死んでいる恋人の体は腐食に耐えられず…
  両方恋は恋でも明らかに描かれた世界がかけはなれていて、そのギャップのすごさが悲しかった。でも

♪イタリアの映画でも見てるようだね

という歌詞もイタリア映画=「サンゲリア」とか?=ゾンビ?ってつながるんだよね。何なんだろうこのリンク。

 あと平山夢明は、登場人物たちの生活や職業に社会的格差の闇(目先の生活苦に縛られ追い詰められ、金のために体を張る=いつ不可抗力に見舞われてもおかしくない状況が当たり前になる、というような。何でも起こりうる環境=ホラーの舞台になりやすいといえるのかもしれない)もさりげなく折り込んで描いているのでそっちも明日は我が身という気がして怖くなった。金無くなると、なんでもしかねないしね、人間。あったらあったで何でもしたくなるしね、人間。困った困った。